栗の花はくせがあって苦手な方も多いですが、香ばしい味がすっかり気に入ってローマの店をあちこち周り、いろんな養蜂家のを試してみました。ローマの裁判所の裏にははちみつ専門店などもあったし、自然食品店もたくさんまわって見つけたのが、カルロ・ピエトランジェリさんという養蜂家の作っているはちみつでした。彼のつくる栗の花のはちみつは、他と違ってエグミが少なく、透き通った味がします。それでいて香りも高く、他の花の種類のはちみつもすべて試してみました。イタリアはチーズもそうだけれど、花の種類によってそれぞれ味がバーンと個性的で、似通っていないのも特徴のひとつです。
その後、ウンブリア州に移ってオリーブオイルの店を東京・阿佐ヶ谷に開いた時に、カルロさんのハチミツもぜひ売りたいと思い、彼の夏の家があるアペニー山脈の麓まで会いに行きました。カルロさんはイタリア国内をトラックでミツバチと移動しながらハチミツを集めています。このアペニー山脈の麓ではタンポポの花のはちみつを作っていたので、見学させて頂きました。蜜蝋を出してきて蜜蝋をナイフでサッサと取り除き(その手さばきのよさに見とれてしまう)、さらに遠心分離機にかけてハチミツが採れるのを見ました。
カルロさんの奥さんがアブルッツォ州の名物料理、アマトリチャーナ(トマトとベーコンのパスタ)を作ってお昼をごちそうしてくださって、子供時代の話などを伺いました(*この話は夫ピエルサンティがブオーノイタリアのHPに載せています)。
そしておみやげに蜜蝋を一枚プレゼントしてくれたのでした。「遠心分離機がなくても、そのままぶら下げておけば蜜が落ちてくるからね」と言われたので、家では蜜蝋から直接垂れてくるはちみつをとって食べていました。
やはり、蜜蝋から出したばかりのはちみつは味が違いました。それまでタンポポの花のはちみつは変わった匂いがして特別な思い入れはなかったのに、「オオッ」と思い、そのおいしさがわかりました。ほっくりとしてキク科特有のかすかな苦みは飽きのこない味です。よく阿佐ヶ谷のお店でも、「はちみつをどうやって料理に使ったらよいですか」と聞かれますが、質の良いおいしいはちみつは料理に使うよりそのまま食べるのが一番です。
私の場合は 毎朝パンにつけたり、ほうじ茶にたっぷり入れて飲んだりもします。朝起きてからの一杯は欠かせません。たっぷり大さじ3、4杯分は食べるので1kgの瓶もすぐになくなってしまいます。病気の時にはリンゴを薄めに切って、ハチミツを入れて柔らかく煮るといいですよ。イタリア料理の場合調味料として使うことはあまりないですが、チーズとの相性は抜群で、栗や西洋ヤマモモなど苦みのあるはちみつを添えてワインのおつまみにしてもいいでしょうし、リコッタチーズにかけてデザートにしても。夫の子供の頃は、リコッタチーズにエスプレッソの粉とはちみつをたっぷりかけて食べるのが最高のデザートだったそうです。
写真:カルロ・ピエトランジェリさんの養蜂場。
