今日は「東京朝市」を少しだけ離れ、これとは別に私が活動している「ロジデリ」の紹介をします。
「ロジデリ」は、岩手のおいしい食べ物を、首都圏に暮らす岩手の出身者がボランティアで販売する取り組みです。“露地”野菜の“デリ”バリーからこの名がつきました。
私は東北の岩手県で生まれ育ちました。生まれたときから目の前には田んぼや畑があって、山があって川があって、それが私の知っている当たり前の世界でした。
春には田に水が入り、桜のあとに田植えが始まる。夜は、それはもううるさいくらいのカエルの大合唱の中で眠りました。夏の岩手はいろんな野菜の大収穫期で、お盆の定番おやつは茹でたてのトウモロコシ。ネギが必要なら目の前の畑からとってくるし、きゅうりが必要なときはお隣(農家さん)にもらいに行く生活。秋になると田んぼが黄金色になり、ザワザワと揺れるときは風が目に見えるようで、そんな中を毎日学校に通いました。稲刈りの後は田んぼに木材を組み、米を乾燥させて収穫。新米を食べるときには神棚にあげ、仏壇にあげ、それから家族みんなでいただきました。長い冬が始まると雪遊びの毎日。友達のお父さんの多くは酒造りの出稼ぎに行っていました。そうしてみんなで春を待ちました。
私が東京に越してきたのはちょうど一年前の4月です。三十ン年のこれまでの人生のうちで東京で暮らすのは今年が通算7年目。越してきた事情は諸々あるのですが、しばらくして、土が恋しくて恋しくてたまらなくなっている自分に気づきました。学生時代東京で過ごしたときには感じなかったこの欲求、もしかしたら“本能”なのかな?とも思うのだけど(30過ぎると本能的な欲求に敏感になるのかしら?)、子どもの頃に汗を流してジャガイモを掘ったりした記憶がフラッシュバックのように蘇ってきたのです。
で、何か岩手とつながっていたい、それも岩手の“農”とつながりたい、そう思ったらいてもたってもいられなくなり“ロジデリ”の仕組みを立ち上げました。仕組みはとてもシンプルで、岩手の採れたて野菜を前の日の夕方に宅急便で送ってもらい、東京都内で開催されるイベントなどでボランティアが販売する、それだけです。“東京朝市”を筆頭にいろんなところに顔を出しています。
販売するのはこれまた岩手出身者の関東在住者。20〜30代の会社勤めの人間たちです。私がミクシィに“こんなこと始めたいんだけど…”と書き込んだら、一緒にやろう!と即座に反応してくれた人たちです。まずは4人で2万円ずつ出し合い資本金8万円(!)で始めました。みんな何か「岩手と関わりたい。岩手とつながっていたい」という潜在的な強い欲求があったようで、何かに新しく出会ったというよりは潜在的な自分の欲求にしたがって素直に行動したという感じです。
例えばスーパーに行くと「岩手産」の野菜が売られているのだけど、正直おいしそうに見えないよね、私たちが岩手で食べていた野菜ってもっとずっとおいしかったよね、そのおいしさを知ってもらいたいよね、そのためには新鮮であることも大事だし、私たちがつくり手の思いを代弁しないといけないよね…そんな話をしながら仕組みを考えました。本当は農家さんに来てもらうのが一番だけど交通費だけでもバカにならないから、やっぱり私たちが農家さんの思いをちゃんと伝えようと、どこの野菜も同じに扱うスーパーの店員とは違うぞという心意気はありました。いいものを売りたいけど私たちが毎回岩手に行くことは時間的にも金銭的にも難しく、岩手で産直をしている“小さな野菜畑”の小島進さんに全面的に協力をいただき、信頼できる農家さんの野菜を毎回送ってもらうことにしました。一方で、岩手に帰省するたびに農家さんや産直めぐりをし、いい関係づくりを出来るだけ心がけました。
このロジデリをリーダー格で引っ張ってくれている小笠原崇くんは、なんとこの3月で某銀行を退職し、岩手に帰ることにしました(ロジデリだけが原因ではなくもっとハッピーな理由があるようですが…でもこのハッピーもロジデリがもたらしたものなのよね!)。彼は人一倍岩手に対する愛情が強くて、当面は岩手でこのロジデリ活動を支えてくれます。それはもう、頼もしい限りです。
おっと、なんだかかなり長文になりました。スミマセン…。調子に乗って筆が走りました。
“ロジデリ”はこんな感じで、月に1〜2回ペースであちこちに出没しては活動しています。今年最初の活動は、この週末の“東京朝市”。遅れて春がやってくる岩手から、今が“旬”の山菜や、昔から冬を越すためにつくられてきた加工品をお届けします。
私がたまたま東京朝市の事務局になり、東京にいながら“農”に熱い思いをもっている人たちと出会い、それが何らか私の心に火をつけて“ロジデリ”の仕組みを立ち上げ、今はたくさんの人が盛り上げてくれている。本当に“縁”は異なもので、なんだか見えないものに引っ張られて今ここに自分がいるんだな〜と感じ入ってしまう、今日この頃なのでした。