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さて今日と明日は、「持続可能な社会づくりを目指し、人と自然の関係・人と人との関係が調和した、土に根ざす農的な暮らしを創る」ために、私が一体どんな活動に取り組んでいるのか、ご紹介したいと思います。
私が現在お付き合いしているジンバブエという国は、アフリカ南部にある日本とほぼ同じ大きさの高原の国です。古くから文明が栄え、石で作られた円筒形の城で有名なグレートジンバブエ遺跡という世界遺産があります。
他のアフリカの国と同様、この国も植民地化された歴史があります。特にジンバブエは、高原で比較的過ごしやすく土地も豊かだったために、白人の支配が1980年まで長引きました。そして独立後も、つい最近まで優良な農地の6割以上を人口の1%にも満たない白人が大農場として所有するという不平等が続いていました。
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植民地化は、単にジンバブエの人々から土地を奪うだけではなく、地域固有の風土に育まれてきた生活文化を破壊するものでもありました。ですから、独立のための戦いは、ジンバブエの人々の伝統的な世界観や文化、規範、智慧などを回復するための戦いでもありました。しかし政治的な独立後も、植民地時代に持ち込まれた効率性や経済性という志向は一層強まり、人々が持っていたコミュニティのつながりや人と自然のつながりは壊れていく一方でした。
しかし、日本でもそうであるように、ジンバブエにもこうした状況に危機感を覚える人たちがいます。荒れた風土を本来の姿に回復し、それを持続的に利用する生活文化を再評価して、土に根ざした農的暮らしを創りだそうとする試みが各地でおこなわれているのです。私は、そうしたグループの一つであり、そのなかでも特に自然とのつながりと伝統文化を大切にしてきているAZTREC(ジンバブエ伝統的環境保護者協会)というグループとこの5年間、じっくりお付き合いをさせてもらっています。
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AZTRECというグループの一番の特徴は、ジンバブエの人々が地域固有の風土のなかで育んできた世界観・自然観を大切にしているところです。彼らによれば、世界は精霊界、自然界、人間界の3つの輪からできています。精霊界は個々に独自の役割を持つ多神教の世界で、精霊たちはそれぞれ湿地や森、山など自然界の特定の場所に住み、鳥やヘビなど動物の姿を借りて人間界にメッセージを伝えるそうです。一方、人間は精霊たちによって生かされている存在で、誰もが少なくとも一つ以上の才能を生まれながらにして精霊たちから与えられているといい、各家(一族)にはそれぞれの守り神が化身した動物がトーテムとして与えられています。つまり、自然界は精霊界と人間界のコミュニケーションをつなぐ聖なる場で、人間は自然を守ることで精霊たちを敬い、精霊と交信する能力を持つ霊媒師を通じて精霊のメッセージを受信し、人としての生を営むのだというのです。
従って、1985年から活動を始めたAZTRECの活動は、まず各地域で伝統的な寄り合いを開いて精霊たちの住みかであり住民の暮らしを支える自然環境の状況を話し合い、湿地や泉、山、森などを保全・回復するとともに、その場所に入れる人、入る際のマナー、ルールといった細かい規範と、それらの自然の恵みを利用する伝統的な知恵や技術を取り戻すことでした。また、精霊を敬い感謝を捧げるために行なわれる雨乞いの儀式や収穫祭、感謝祭などの大切な祭りを復活させることもおこなわれてきています。
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日本でもアジアでも村の古老や篤農家の方にお話を伺う時はいつも感じるのですが、農的な暮らしの根っこには、それぞれの風土に根ざした自然の見方と、それに基づく人生観のようなものが存在しています。これはアフリカでも同じで、生活の知恵や技術の裏側にあるものに耳を傾けることがまず大切であり、それ自体がとても楽しい学びのプロセスです。
また深夜になってしまったので、続きは明日に。