2005年05月04日

東京都豊島区 松井和久 4日目 水俣から学ぶ

いよいよ今回のインドネシア出張のメイン・イベント、原田正純著「水俣病」(岩波新書)インドネシア語版の出版記念セミナーが、マカッサル市内の国立ハサヌディン大学で開催されました。開始時刻の午前9時にはまだ数人程度しか来ていませんでしたが、9時半頃から人が集まりだし、結局、200人を超える出席者で盛会となりました。出席者の多くは学生やNGOなどの若い世代が多かったのが印象的でした。




主催者のMKS、AMDAインドネシア、ハサヌディン大学医学部などの挨拶に続いて、原著者である熊本学園大学の原田正純教授が、昨晩、私が深夜までかかってインドネシア語訳をつけたプレゼンテーション資料を使い、「水俣からのメッセージ」と題して講演を行いました。原田氏は手馴れた様子で講演されていましたが、対外へ排出されやすい無機水銀よりもタンパク質と結びついて体内に蓄積されやすい有機水銀が被害を深刻にしたこと、胎盤が有機水銀を通さないと医学的に信じ込まれていたため胎盤性水俣病の発見が遅れてしまったこと、などの話で、途中で何度も心に迫る場面があり、出席者の多くが涙腺を潤ませるような光景が幾度も見られました。




原田氏は、水俣病は有機水銀中毒という比較的シンプルな原因だったが、今後の公害病は様々な原因要素が交じり合う複合的な形で現れるとし、原因究明は困難を極めるであろうことを指摘すると同時に、水俣病を含む公害病に対して医学的なアプローチのみでは限界があり、その病気が発生した社会の貧困やその後のプロセスの中で破壊されていくコミュニティに眼を向けた「地域」を捉えるアプローチなど様々なアプローチを総合してとっていくことが必要であることを強調していました。「水俣病かどうか」ということを医学的究明しただけでは何も解決したことにはならない、というメッセージでした。

インドネシア・スラウェシ島では、北スラウェシ州のブヤット湾で何らかの重金属汚染と見られる状況が起こっており、湾に流れる川の上流にある米系金鉱会社ニューモント社の現地子会社が批判の矢面に立たされています。この会社が水銀やヒ素などを垂れ流していた(あるいは空中へ放出していた)と報道され、現在、政府はニューモント社を環境汚染を理由に告訴しています。当初は「水俣病ではないか」という見方さえありました。しかし、ニューモント社からロイヤリティなど様々な収入を得られる地方政府などは目をつぶり、逆にニューモント社を敵視する運動をやめるようにとの様々な圧力がかけられ、当初住民を支援していた多数のNGOも手を引いていきました。「ブヤット湾に環境汚染があるかないか」という問題に終始して、地域の利権と絡んで高度に政治化してしまい、結局、移転を望む現地住民が行政から放置されているのが現状です。

このブヤット湾のある北スラウェシ州の州都マナドの本屋では、「水俣病」インドネシア語版が発売されて数日のうちに売れ切れてしまったとのことです。市民の関心が高いのか、それとも反ニューモントの世論形成に使われることを恐れたグループが買い占めたのか、どうも後者の可能性が高いとセミナーに参加した現地NGOは語っていました。この本の出版を契機として、環境問題で「汚染があったかどうか」「外資系企業はけしからん」といったレベルの議論を超え、住民の現状を様々な角度から科学的に調査し議論していくように、そして住民本位の対策を講じられるように、インドネシアでもなっていって欲しいと願っています。





posted by LJ21 at 23:45| Comment(0) | TrackBack(0) | インドネシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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