2005年05月07日

東京都豊島区 松井和久 7日目 東京へ戻る

わずか4泊5日のインドネシア行きでしたが、相変わらず朝から晩までバタバタと動き回っていたような気がします。でも、短期間であれ、インドネシアの空気を吸って、少しだけ新たな気分で日本での生活に戻れそうな気がします。

振り返ってみれば、昨年6月に、熊本日日新聞社から原田正純著「水俣病」(岩波新書、1972年)の英語版が出版されたのが始まりでした。早速入手し、それを8月に試しにマカッサルの仲間たち(地元NGOのMKS[Media Kajian Sulawesi])のところへ持っていったところ、「是非インドネシア語に翻訳したい」と強く懇願されました。折りしも、今回紹介した北スラウェシ州ブヤット湾で「水俣病が発生した」という新聞報道が世論を騒がせていた頃でした。それから約半年で翻訳は終わり、日本での著者、出版社、写真家などとの交渉を終え、ようやく出版となりました。彼らとしては、水俣病の有無よりも、水俣病というものがいかなるものかをきちんと知ってもらいたい、というのが出版の意図でした。

インドネシアの人々は、病気は薬を飲めばすぐ治ると信じている一面があります。出版記念セミナーでも「水俣病はどうすれば治るのか」「予防はどうすればよいのか」という質問が出ました。原田氏からの「治ることはない」「(有機水銀の科学的有用性は否定しないが)有機水銀を排出しないこと」という答えは、セミナー参加者に重く受けとめられたようです。植民地時代から行政が住民を監視・敵視してきた長い歴史を経て、ようやく行政と住民とがコミュニケーションをとらないわけにはいかない時代となってきた今日、もはや行政がブヤット湾のような問題を隠蔽することは困難であるにもかかわらず、行政も住民もなかなか歩み寄れない状況が続いています。

しかし、今回の「水俣から何を学ぶか」という私たちの問いは、翻って「水俣から我々は何を学んできたのか」という問いになって自身へ返ってきたようにも思えます。来年は水俣病が正式に「発見」されてから50年。地元学を生み出してきた背景にある、様々な苦しみや葛藤の水俣50年の歴史の重みを踏まえながら、最も重要な何かを国内外の様々な人々に伝えていく必要を痛切に感じた1週間でした。

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今週1週間、私のつたない「日記」にお付き合いいただきありがとうございました。またどこかで皆様にお世話になることと思います。いろいろとご指導いただければ幸いです。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。





posted by LJ21 at 23:47| Comment(2) | TrackBack(0) | 東京都 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私は、インドネシアの一地方で水俣病に似た現象が起こっているとはつゆも知りませんでした。日本のマスメディアの報道の仕方にも問題はあるのかもしれませんが、いかに私が同じアジアの人々のことを知らないかということを感じました。かつて水俣病を経験した国としてもっと深く関わってもよいと言うのは、うがちすぎでしょうか。しかし、この翻訳の出版によって、水俣の経験が現地の人々にとって何らかの形で還元されることと思います。末筆ながら、インドネシアの水俣病問題が早く解決されることと、松井さんの今後のご活躍をお祈りいたします。
Posted by r-nagara at 2005年05月10日 22:55
誤解のないように申し上げますが、インドネシアのブヤット湾で起こっているのは実は「水俣病」ではありません。何らかの複合的な環境汚染が住民に影響を与えているようなのですが、それを十分な調査や知識もなしにイメージだけで「水俣病」と決め付けたインドネシアのNGOなどの対応こそが問題にされるべきなのです。だからこそ『水俣病』のインドネシア語版が必要だったと考えます。原田先生の弁では「むしろブヤット病ではないかという視点で患者救済を最優先すべき」という印象です。ブログでお伝えしたい意図が誤解なく伝わることを願っております。
Posted by 松井和久 at 2005年05月13日 06:22
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