昨晩、沖縄に移住した友人から突然電話がかかってきて、8月に沖縄から奄美に行く5日間のサバニレースに一緒に出てくれないか、と誘われました。サバニというのは、沖縄の漁に使われる伝統的な舟で、木の板を接いで作られるもので、帆がついており、長距離の航海でも耐えられるものだそうです。私はまだサバニを漕いだことがないので、不安は少しありますが、友人は、必要なのは情熱だけだ、と断言していたので、即OKしました。がんばります!
実は私は、天草で櫓漕ぎの伝馬船に出会って、たいへん魅了され、2004年に島の子どもたちと、伝馬船で自分たちの島をめぐるワークショップをやりました。伝馬船は昔、桟橋がない港で、大きな船と陸の間を、荷物や人を運ぶために使われていた艀舟で、漁にも使われます。舟の後ろに付けた一丁の櫓で、水を捏ねるように動かして進みます。櫂も使われ、こちらは櫓よりも難しいといわれています。今では漁船は全てエンジンが付いて速く進むようになったので、伝馬船で漁をする人は本当にわずかに残るのみとなっています。島の大人たちに聞くと、子どもの頃は伝馬船は最高の遊び道具だったとか。子どもだけで勝手に伝馬船を漕ぎ出して、波にひっくり返されて、どうにか泳いで帰ってきて、親に思いきり叱られた、という経験はみんなしているみたいです。今の30歳くらいの人を境に、その下の世代は伝馬船を漕いだことがほとんどありませんでした。船が速くて危ないから、島の子どもたちは、港で泳いで遊ぶことがなくなり、伝馬船も次第に姿を消したというわけです。
2004年のワークショップのために、小学一年生の子どもから、中学3年生まで20人の子どもたちと伝馬船を漕ぐ練習をし、みんな驚くなかれ、本当に上手に舟を漕ぐようになりました。伝馬船を漕いでいる時、その一双の舟の行く先や、乗っているみんなや、色んな物が、一人の手と、一本の櫓に委ねられていて、子どもが漕いでいる時の表情は、それらを担っている責任感で、誇らしげに輝くのでした。無事に航海を終えた時は、何ともたくましく成長していました。