
最初は田舎暮らしに不安もありましたが、広いスペースと見事な自然に囲まれた生活は性にあっていたようで、今ではすっかりここに落ち着いています。中でも近所の農家の人々から学んだここでの暮らし方は、私にとって大きな意味がありました。野菜は出来るだけ自分たちで育て、肉も農家で自分の家族用に飼育している豚、羊、牛、ニワトリ、ウサギなどを直接売ってもらいます。もちろん、買ったら解体も手伝いますし、保存食の生ハムやソーセージも作ります。
オリーブ畑と麦畑がどこまでも広がる丘陵地帯で、観光地とは程遠い田舎。家の前の道路は舗装されていなく、周りの森にはキツネの巣がいくつもあり、家の暖炉の煙突からはフクロウの赤ちゃんが落ちてきたこともありました。5歳の息子は大喜びです。
ちょうど今の季節にイタリアの田舎を車で走っていると、おじさんやおばさんが林の中で何かを採っているのをよく見かけます。たいていは野生のアスパラガスの採取で、皆一日かけて手に一杯採ります。野生のアスパラガスのおいしさには、マムシの怖さも吹き飛んでしまうと、皆口を揃えます。
4月23日の日刊紙レプッブリカに、「イタリア人はアスパラ好き」という記事がありました。それによると、イタリア人一人当たりのアスパラ消費量は年間500g以上だそう。年間とは言っても、イタリアでは東京のように年中アスパラガスを見かけるわけではないので、”旬のわずか2ヶ月間”と言った方がいいかもしれません。
パスタにリゾット、蒸して塩とオリーブオイル、レモンを搾っただけのアスパラガスに、生みたての卵を目玉焼き(半熟)にして一緒に食べたり、ここぞとばかりに味わいます。アスパラには腸内を殺菌する作用もあるといい、たくさん食べるとトイレに行った時に匂いですぐわかります(小の方)。殺菌されているなあと実感もわきます。
オリーブオイルとニンニクと塩で、茹でずに直接ゆっくり炒めて、柔らかくして食べるのもいいものです。マヨネーズをつけるなんてもったいなくてできません。やはりアスパラそのもののおいしさを味わうなら、塩味が一番です。
それでは、1週間よろしくお願いします。