2006年01月13日

愛媛の誇る雑魚食文化「じゃこ天」 野崎賢也

BTH2226541_0B.jpg小魚のすり身を使う料理は日本各地にありますが、愛媛が誇る「じゃこ天」もその一つです。「じゃこ」というのは、広い意味では「雑魚(ざこ)」のことですね。愛媛のじゃこ天の原材料として良く知られているのは、「ハランボ(ホタルジャコ)」という小魚ですが、それ以外の「雑魚」も使われます。

 瀬戸内海の西南端、太平洋と接する宇和海の幸が水揚げされる市場から、遠くに運ぶだけの金銭的価値のない「雑魚」が、地域の加工業者さんに引き取られ、地元で消費される真性ローカルな食べ物になります。逆にいうと、おいしい「小魚」は、アシも早いし(鮮度が落ちやすい)、基本的にはその土地でしか味わえない、ローカルな食の象徴なのです。

 そうした小さな雑魚を、シンプルな工程で加工し、価値のあるものにする(あくまで地元向けの価値です)、家族経営の水産加工業者が地域にたくさんあり、地元の人たちの日常のなかに根付いている。この「じゃこ天」は、愛媛県南部(南予地方)の確固とした食文化だといえるでしょう。
 翌日の東京出張の手みやげに、松山市内の店舗(南予の業者の支店)2軒で買い求め、自分でも味見してみました。



食感こそがじゃこ天の生命

BTH2226541_1B.jpgじゃこ天は、ハランボなど小魚の頭を落としハラワタを取り除き(女性たちの熟練の手技が支える)、塩や調味料を加えたすり身を成型して揚げるだけです。油で加熱調理する「天ぷら」であっても、それは鮮度が最重要な「生もの」だと認識しなければなりません。じゃこ天の生命線となっている「ぶりんぶりん」の食感は同時に、それが「生もの」であることの証明だといえます。
 いま一般的には、魚の練り物は保存料や着色料などの添加物がたくさん入っており、「生もの」からどんどん遠ざかっていますが、地元の普通のじゃこ天には添加物はごく限られたものだけしか使われていません。

 店頭で揚げたてのアツアツのじゃこ天は、そのまま食べますが、食べるまでに時間がかかる場合やお土産用としては、揚げた後に冷まして冷蔵状態にしたものがあります。食べる際に、さっと炙るだけで、ぶりんぶりんの食感が蘇ります。今回の味見はこの5種です。

 炙ったものの断面を見ると、それぞれ微妙に違うことが分かります。この気泡の違いが食感の違いに結びついているのだろうか。こうやってこじつけでもよいので、自分の頭で考えて仮説をたててみる、そしてその仮説を実地検証する(最高においしいものが作られるその場で食べる)、これはまさに学問の王道であります。

「すり身」も売られています

BTH2226541_2B.jpg 揚げればじゃこ天になる「すり身」も、商品として売られています。これは日持ちしませんし、ほんとの地元家庭消費のための食品です。「すり身」は、鍋や汁物にいれてもおいしいし、揚げ立てを食べるともちろんおいしい。翌日の東京にはこの「すり身」も手土産にしました。
 先月の話ですが、この「すり身」のなかでもとてもレアで貴重な(と地元以外の私は思います)「ハリメのすり身」をいただきました。ハリメというのは、イシモチの一種の小魚です。愛媛県最南端の愛南町出身のわが研究室の学生のご両親からいただきました。こんな出会い(人と食)があると、大学教員をやっていてよかったなあ、とつくづく思います。
 今年度、その愛南町で、魚の食育プログラム開発と、地域の食の現状の調査を実施しています。その調査で漁業の町を訪れるたびに思いますが、日本の地域の食文化はほんとうに奥深いですし、それを維持し続ける人たちと地域社会がなければ存続しないものです。



posted by LJ21 at 14:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 愛媛県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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