2007年05月16日

フォトメッセージマガジン『日向時間』 藤木テツロー2日目 【宮崎県高千穂町】

今日は、弥勒先生の最愛の妻、マスエさんの告別式がありました。

今朝の九時過ぎにパソコンを開き、メールを確認してみますと、『最愛の妻逝く』の文字。送り主は『日向時間』に毎号、西米良村の四季の写真とエッセイを執筆して戴いた写真家の小河孝浩さんからでした。小河さんの奥さんは40歳ぐらい。まさか事故にでもあったのかと思い、メールをよく読んでみますと、お亡くなりになったのは、同じく『日向時間』に毎号、宮崎の風景を描いて戴いた画家の弥勒祐徳先生の最愛の妻、マスエさんのことでした。

告別式が11時とあります。場所が新富町。私が住む高千穂町から車で二時間ほどかかります。私は急いで告別式に出席できる準備を整え、会場に車を走らせました。車中で弥勒先生のことを思いました。

弥勒先生は本名、弥勒祐徳(みろくすけのり)。宮崎を代表する画家であり、その画、ご本人の人柄から、老若男女を問わず多くの方々から慕われております。大正八年生まれ、当年とって88歳。未だ画業衰えず。(昨年、たまたま西米良村の夜神楽で、ご一緒させて戴きましたが、晩から朝にかけて夜通し、百号サイズのキャンバスに黙々と筆を走らせておりました)個展も三百六十回を越えております。

私と弥勒先生との出会いは、今から一年半ほど前の『日向時間』の企画を立てている頃でした。写真家の小河さんより、小河さんと弥勒先生との二人展のお誘いを受け、宮崎市にある画廊で初めて弥勒先生の絵を見ました。精神の解放されているとても自由な絵でした。「村は生きている」、村に生きる可笑しみ、楽しみ、悲しみ、苦しみ、誰をも受け入れ、包み込んでくれるような優しさを感じ、一瞬にして私は(ミロキスト)となりました。

小河さんを通して『日向時間』にご出演のご依頼をさせて戴くと、弥勒先生は、「そりゃ、若者が頑張っちょるなら、描かん分けにはいきませんな」と三納弁で答えて下さったそうです。以後、創刊号から冬号(四号)まで、『日向時間』の一ページ目には弥勒先生の絵を掲載させて戴きました。

私が、『日向時間』の休憩(休刊)をご報告にも上がった際に、「挫けんで、頑張って下さい!」と、屈託の無い笑顔で握手をして私を励まして下さいました。88歳の先生に挫けんで下さいと言われ、挫けている場合ではないと思いました。弥勒先生は長い間、多くの絵の仲間から馬鹿にされてきたそうです。絵が汚い。子供の絵だと罵られてきたそうです。それでも絵を描き続けてきました。私が初めて出あった、本物の芸術家です。それを支え続けてきたのが妻のマスエさんだったそうです。

マスエさんは、大正十五年生まれ。一九歳で弥勒先生と結婚し、弥勒先生に好きな絵を描いてもらいたいからと、美容師の免許を取得し、自宅に併設した美容院を開業しました。一男三女の母として、妻として、弥勒先生のことを影となり日向となり支えてこられたそうです。九年前に病に倒れ、六年前からは寝たきりになりました。弥勒先生は、病院よりマスエさんを連れて帰ると、以後、自分と美容院を継いだ三女の和子さんと共に、マスエさんの介護を始めました。弥勒先生は介護をしながらも、絵を描くことは止めず、マスエさんの顔を描いてきた介護日記も1600枚を超えたそうです。

そして今日、最後の介護日記になると思われるマスエさんの絵とメッセージが、安らかに眠っているマスエさんの枕元におかれてありました。「ありがとう」のメッセージ。感謝の気持ちと、悲しみを生きる力に変えようとするメッセージだったと思います。参列者は、別れの杯や花を、棺の中にお供えしました。その姿は、まさしく弥勒先生が描いた村のお葬式のようでした。

出棺となり、マスエさんを乗せた霊柩車が式場を離れます。皆、拝礼をして見送りました。暫くして頭を上げ、霊柩車の方を見ると、助手席の窓から弥勒先生が腕をつきだして、見えなくなるまで私たちに手を振っていました。弥勒先生の参列者に向けた感謝の気持ちだったのでしょう。「弥勒先生らしいなぁ」と、皆、心の中で思ったことだと思います。

マスエさんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。

写真家・小河孝浩さんのブログに、マスエさんの葬儀の様子が書かれています。

『小伝 弥勒先生』 (井口幸久著)

※今日は、写真は無しです。


posted by LJ21 at 09:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 宮崎県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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